小石の眼から見た景色 あらかた50主婦のあったこと録

その辺に転がっている小石のあれこれ体験録です。

認知症病棟の思い出

映画「閉鎖病棟ーそれぞれの朝ー」を妹の立場で見てしまう~認知症病棟の思い出8

映画や小説、ドラマなどを見ていて「作者の意図とは違う視点で見ているな。」と、感じることが多くなりました。年齢を重ねて。 私はどうしても自分に近い人に感情移入してしまいがち。けれど50代のおばちゃんの日々はドラマティックからは遠く、主役にはなり…

「ザ・トラベルナース」第2話を見て経鼻経管栄養のN村さんを思い出す~認知症病棟の思い出7

2022年10月スタートのドラマ「ザ・トラベルナース」第2話まで見たのですが、もう次の放送は第6話。 なにかと慌ただしい毎日で、録画が溜まる一方。追いつける気がしなくなってきました。 とはいえ、結構興味深いドラマ。第2話は「口から食べる」ことにつ…

認知症になることは「子どもに帰る」ことではない~さだまさし「療養所(サナトリウム)」と認知症病棟の思い出6

※本文中青太字は、さだまさし「療養所(サナトリウム)」の歌詩を引用しています。 私が子どもの頃(大体40年程前)は、よく言われていた。「人は歳をとると、子どもに帰る」と。 自分が年寄りになるなんてイメージできるわけもなく、近所のお年寄りや自分…

言葉の奥の思いをさぐる~認知症病棟の思い出5

介護保険制度の生まれる前、まだ、認知症が「痴呆」と呼ばれていた頃、精神科の「老人性痴呆病棟」に勤務していた。 精神疾患で長期入院のまま高齢になった人のうち、症状が落ち着いている人も、認知症の人も、ひとくくりに「痴呆」としてその病棟で過ごして…

「あれ」が見えても見えなくても~認知症病棟の思い出(番外編)

就業初日、病棟の主任から「3か月で1人前になってください」と言われた。 初日の衝撃 霊感のある(自称)スタッフ 大切なのは「本当か嘘か」ではなく 初日の衝撃 まだ、認知症が「痴呆」と呼ばれていた頃の精神科の「認知症病棟」。 重い扉の鍵を開けると…

働き者のKさん~認知症病棟の思い出4

秋が深まると、思い出す人がいる。 まだ、認知症が「痴呆」と呼ばれていた頃に勤務していた精神科の痴呆(認知症)病棟に、ある日、小柄な女性(Kさん)が入院された。 大正初期生まれのKさんは、小柄なうえに腰がひどく曲がっていたので、お顔が私のお腹…

思い出の中を生きていても~認知症病棟の思い出3

明るい窓際のイスに腰かけ、温かい笑顔を浮かべているA子さんは、少しふくよかで、ふんわりとした髪の持ち主。 その髪は真っ白だけど、まだ自分は二十歳前なのだと教えてくれる。 以前勤務していた精神科の認知症病棟では、私が働き始めて数か月後に「患者…

Tさんのキーパーソンへ愛をこめて~認知症病棟の思い出2

お盆やお正月が近づくと、 以前勤務していた精神科の認知症病棟では、キーパーソンへの定期連絡の作業が加わった。 私は何の資格もなかったけれど、当時、病棟の人員要件とかなんとかで、大卒というだけで家族対応の係を任されてしまった。 普段は、入浴・排…

忘れても感情が心に積もっていく~認知症病棟の思い出1

まだ、認知症が「痴呆」と呼ばれていた頃、精神科の「老人性痴呆病棟」に勤務していた。 もちろん介護保険制度の生まれる前。呼び名も違えば、対処もまるで違っていた。 その病棟では、机とイスが並ぶ、だだっ広く妙に明るい空間で、日中60人が過ごしてい…