小石の眼から見た景色 あらかた50主婦のあったこと録

その辺に転がっている小石のあれこれ体験録です。

高齢の父から免許を無理やり取り上げた時のこと(後編)

 前回の続きです。 

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母の一人暮らしが突然始まる

父の運転について具体的な対策が取れないままでいたある日、身体が弱い母ではなく、父が急遽、入院することになりました。

 母の受診に付き添った病院で転倒し、足を骨折。運良く(?)病院だったので、そのまま入院。愛車はというと、運転できる家族がいないので、しばらく病院の駐車場に置いたままにさせてもらうことにしました。

 

最低限の家事はできるものの、家の外に出ることに関しては全て父任せだった母の、突然の一人暮らしが始まりました。

 

同県に住む姉は、仕事が不規則で激務。私もそう度々帰ることはできない。翌週帰る時までに、何か策を練らなければ!

ともかく1週間ほどは暮らせるよう、タクシーで食材を買い込みに行きます。タクシー代が片道3千円超え!(涙涙)

 

両親はまだ要介護認定を受けていませんでした。2人で何とか暮らしていたので、恐らく認定されないと思っていたし、何より両親は、他人の介入を拒む気持ちが強かったのです。

 もうそんなこと言っていられません。ともかく母の介護認定を申請。でも、介護保険を利用できない「自立」と判定される可能性もあるし、判定を待つ時間はない!とにかく今すぐ何とか一人で生活できるようにしなければ! 

 

その地域のJA(農協)で実施されていた、生活支援(介護保険外なので結構お金はかかる)を受けることにし、ヘルパーさんに週1回訪問してもらい、簡単な掃除と買い物をお願いできました。

加えて、配食サービスを利用。安価で栄養バランスに配慮されたお弁当を、見守り兼ねて届けてもらえます。

 これで、ひとまず食べることは何とかなる。父の病院や母の受診、銀行などのことは、姉と交代で帰り、乗り切ることにしました。

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 運転を諦められない父

母の心配ばかりしていた父に対応を説明すると、家に他人を入れることもすんなり了解。「買い物サービスもあるし、もう無理して運転しなくて大丈夫だよ。」と言うと、心からほっとした表情になりました。

母のために、無理して頑張ってたんだな~。もっと早く強引にでも動けばよかった。これで父の運転の心配しなくてすむ。よかった~。

骨折で運動機能はもっと低下しています。とても運転させられません。サービスを受ければ何とかなりそうだし、車検の時期だし、丁度免許も更新時期。そのうち車を処分して・・・と思っていたのです。

 

 ところが、その後リハビリで自信を取り戻したのか、父が病院からディーラーに電話をし、愛車を車検に出してしまいました。

おまけに、退院時に乗って帰るから、車検後病院に納車されることになっている!と言うではありませんか!

なんだってーーー!!誰かとめてーー

医師からも運転は難しいと言ってもらいましたが、耳を貸しません。

 

ケアマネージャー(退院時に介護認定申請するためにお願いした)に相談すると、「運転を辞めさせることは、お父さんの生きがいを奪うのでは?」と言われました。

は?生きがいのために、人を殺めるかもしれない状態で運転を続けさせろと?

車がなくても生活できるように、別の生きがいを持って生活できるように、四苦八苦するのが、家族とあなたの役目じゃないのか?

 

誰にも頼れなかった私の取った行動は、ディーラーに直談判でした。

電話をかけ、父の運転がいかに危険か、医師の話、このままでは加害者になってしまうかもしれないと訴えました。納車しないでもらいたいと。

親身に話を聞いていただき、社内で検討してもらった結果、「お約束なので納車しないことは無理だが、退院までに間に合わないことにして、病院ではなく家に納車しましょう。」というお返事をいただきました。

今から10年ほど前の話なので可能だったのかもしれません。約束の日時に間に合わないという、ディーラーにしてみれば失態を敢えてかぶり、父に連絡してくれました。

あの時協力してくださったディーラーの皆さんには、心から感謝しています。 

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 退院後、父の歩行状態は予想より悪く、庭の(しかも奥に納車してくださった)車に一人ではなかなかたどりつけません。更新時期が過ぎ、免許失効となりました。

配食サービスや、ヘルパーさんにお買い物を頼める生活に慣れると、運転のことは口にしなくなりました。愛車の心配はずっとしていましたが。

 

歩行状態が悪かったのと、「無免許運転はできない」という理解力があったので、可能だった話です。

 

父に嘘をつき、実質は無理やり免許を取り上げてしまいました。

帰るたびに老けていく父の姿を見ると、自由に外出する足を奪った自責の念が消えることはありませんでした。

確かに「生きがい」を奪ったのだろうと。

でも、あのままでは、きっと事故をおこし、誰かを傷つけていたかもしれない。

後悔はないし、間違っていたとは思っていない。ただ、今でも切ない感情が残っているというだけです。