そこそこ貧乏な家あるあるですが、皆が持っていて当たり前の物がなくて困るということが、しばしば起こります。
色々ありましたが、その一つが「自転車」でした。
私は、持っていないだけではありません。
小学生の頃、近所で怪我をした子がいて、ヒステリックになった母から
「自転車に乗ってはいけません」という命令が下り、
乗ることすらできなかったのです。
クラブ活動で自転車が必要!?
中学校では、授業の一環としてのクラブ活動がありました。
熱心な授業が好きだった、K先生が率いる「地域学習」のクラブに入ることに。
その頃、小学5,6年の担任が大好きだったことや、勉強が好きだったこともあり、
「将来学校の先生になりたいな~」と、漠然と思っていました。
K先生のことも、誠実そうで、好感を持っていたのです。
クラブの最初の日、
「地域を知るために自転車であちこち回ろうと思っている」と、お話がありました。
え・・・自転車いるの?
そんなこと決める前に言ってくれたら選ばなかったのに。
家にある自転車は、兄の通学用のみ。私には相当大きいサイズ。
それより何より、私は自転車にほとんど乗ったことがない。
どうしよう。
でも、中学生にもなって自転車に乗れないなんて、そして家に自転車がないなんて、
教室で言い出せず、悩みながら帰宅。
母に相談すると、母が一言
「えー? あんたって自転車にも乗れないのー?」
いやいやいやいや。
乗るなって命令したの自分だよね。忘れてる??
そもそも、うちに使える自転車ないじゃん!
忠実に守った私がバカだったわけ?
中学生になったら、みんな自動的に自転車乗れるようになるわけ???
ってことは、やっぱり私がダメダメで、運動神経悪いからいけないの??
もう、どうしていいかわからない。正直に言うしかない。
K先生なら、きっとわかってくれる。
震える手でダイヤルを回し(昭和だ!!)、K先生に電話をしました。
「そうか・・教室で言えなかったんだね。辛かったね。」
先生の優しい言葉に、胸が詰まって話ができません。
「初回から行くわけじゃないから、練習してみようか?」
ということで話がまとまりました。
「先生にお話して良かった。」心の底からそう思ったのです。
自転車に乗れないって面白いの?
K先生にお電話した翌日の放課後のことでした。
日直の仕事で教室に残っていたところに、担任のH先生がやってきました。
職員会議の後のようです。
「ほんさき~ お前、自転車乗れないって本当か~?
嘘だろ~(笑)」
「…乗れません」
「えっ! ほんとに?
中学生のくせに自転車乗れないのか? わはははは・・・」
職員会議で話が出たんだな。こんな子がいるって。
そして、それは、爆笑するほど面白い話だったわけ?
自分が情けなくて、貧乏が恥ずかしくて、
言えなくて苦しくて、やっとの思いで打ち明けたのに。
「辛かったね」って言ってくれたのに。
わかってくれたと思ったのに。
大声で笑って去っていく後姿を眺めながら、足元が崩れ去るようでした。
信用できない大人・大切な仲間
自転車の練習が必要だと、部活の仲間に相談すると、笑うどころか皆で練習を手伝ってくれました。
学校近くの子が自分の自転車を持ってきてくれ、部活の後、公園で練習する日が続きました。
中学生にもなって自転車の練習なんて恥ずかしかったのですが、仲間がいてくれたおかげで、人目を気にせず練習できました。
クラブで乗る当日。
自転車通学の友人が快く自転車を貸してくれ、何とかついていくことができました。
教師なんか信用できない。
親だって信じられない。
私が必要としているのは仲間だ。
この仲間を大切にしよう。
人付き合いがあまり得意ではなかった私ですが、仲間の存在のありがたさが胸にしみ、
反対に、教師や親に反発心を強く抱くようになりました。
もう優等生なんてくそくらえだ。
大人の言うことなど信じない。
今思うと、K先生は、多分真剣に会議でお話になったのだと思います。
K先生にまで反発しなくても良かったのに、そんな余裕はありませんでした。
担任のH先生は、その翌年のクラブ説明の時に、わざわざ私の隣で
「自転車に乗れる人でないと参加できないぞ~」
と、何度も言って、ニヤニヤしていました。
両親の年齢が高いといって、からかっていた先生です。
「教師にだけは決してなるまい」と、私は決意しました。
子どもに与える影響の、良い面にしても悪い面にしても、どちらもあまりに大きい。
教師という職業に怖さを感じました。
今でも、教師に対する憧れと不信感が相まって、
ついつい厳しい目で見てしまいます。
子どもたちの担任と揉めない様に、実は密かに自制しています。
ほんさき
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