姉は美しい。
切れ長の目、高い鼻、形の綺麗な口、白くきめ細やかな肌。
手の指も細く長く、爪の形さえも整っている。
今でも私より少し背が高く、足も長く、私より少し体重が少ない。
姉は賢く器用だ。運動神経も良い。
勉強は何でもすぐできるようになるし、夏休みの宿題は計画通り7月中に済ませてしまっていた。
お人形の洋服をオリジナルで作ってしまえたし、料理も上手いし手際が良い。
足が速く、ドッジボールも投げても取っても強かった。
そして姉は優しい。
いつも母を気遣い、すすんでお手伝いをし、変わっている妹の世話をした。
共感力があり、悲しみに触れると純粋な涙を流す。
姉は可能な限りの「善」のパーツを使って作られたような人だ。
母の身体に残ったパーツで、何とか作られたのが妹の私だと、時々揶揄されたし、自分でさえそう納得してしまうほど、姉は素晴らしい。
そんな人が、家でも、学校でも、目の上のたん瘤のように存在し、私は「ほんとに、妹なの?」と、ビックリされていた。
コンプレックスで、自分がほとほと嫌になっていたけれど、嫌になるのは自分自身のできの悪さであって、今でも美しい姉に憧れるし、自慢に思っている。
私が故郷を離れ、苗字が変わり、姉とはほとんど接点のない日々が続いたけれど、主に姉妹2人で両親の面倒をみることになり、頻繁に顔を合わす時期があった。
久しぶりに会う姉は、やっぱり美しかった。
素で美しい上に、自分を美しく見せるセンスもあり、でも、それ以上に「美しくある」よう努力していた。
実家で落ち合うと、自然と想い出話が始まる。
私を気遣ってか、姉は何とか私を褒めようとする。
目も鼻も丸くてかわいい(鼻が丸いのは嬉しくない)
肌が強そう(まあ確かにワイルドだわね)
手や爪が小さくてかわいいとか、筋肉質で羨ましいとか(・・絶対褒めてないだろ)
夏休みの宿題、ぎりぎりに始めても終わらせるのすごかった(それ褒めてる?)
絵や作文が上手くて羨ましかった(確かに、姉の作文のゴーストライターにもなった)
お手伝いしたくないって言えてすごかった(あれ?言ったっけ?)
自由で、意志が強くて、冷静でしっかりしていて・・・
妹の方がしっかり者な気がして、姉としてコンプレックスだった。
あなたは、可愛くて、発想が豊かで、仲のいい親友がいて羨ましい。
こんなに完璧な姉なのに、こんな私にコンプレックスを抱いていたのか?と衝撃だった。
私たち姉妹は、お互いにコンプレックスを抱えて勝手に傷ついていたようだ。
結局、ないものねだりなんだな。
自分に無いものを悲しんで、いじけて生きては勿体ないかもな。という気分になった。
両親の葬儀も終わり、長い相続問題も一段落し、また、ほとんど連絡を取らない日々に戻ってしまっている。
独りの姉は、これからも美しくカッコよく生きていくのだろうし、私もそれなりに面白く生きていくと思う。
そして、胸に抱いているのはコンプレックスではなく、相手を尊敬する気持ちだといいなと思う。
ほんさき
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