小石の眼から見た景色 あらかた50主婦のあったこと録

その辺に転がっている小石のあれこれ体験録です。

小さなヒーローAくんと斜視のおばちゃん

前記事では、タコ!タコ!と失礼いたしました。

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親になってからの「見た目&見え方問題」

 結婚し、親となってからは、「見た目問題」以上に「見え方問題」で、不自由を感じる場面が多くありました。 

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夫の協力が得られない平日の、保育園の送り迎え、子ども達の通院、急な買い物・・・

 

長男が小学4年の頃から、地域の野球チームに入ったのですが、急な送迎や、お茶当番の荷物、ちょこちょこした場面で運転が必要になります。

「ちょっと遊びに行こう」なんて時にも気を遣わせるし、他の保護者に申し訳なくて、情けなくて、片隅で目立たないようにして、関わりを避けることが多くなってしまいました。

 

見た目の方は、相変わらず私の目を見て「ぎょっ!」っとする人はいるものの、面と向かって悪口を言われることは減りました。

小学生くらいまでの子ども達は、良くも悪くも素直なので、園や学校に行くと「おばちゃんの目へんー」「どこ見てる~?」と、よく笑われました。

 

心配していた息子たちへの遺伝はありませんでしたが、「息子は私のことを気持ち悪いと思うのでは?」などど気になって、目を見るのが怖いと思う時期もありました。

今思うと、赤ちゃんなのに、「お母さん気持ち悪い」なんて思わないですよね。思考が少しおかしくなっていたのだと思います。

 

小さなヒーローAくん

Aくんは、二男と同じ年。保育園時代から一緒です。

ちょっと・・結構やんちゃな兄弟の一人。同じ年なのに、保育園の頃から兄貴風を吹かせていました。

彼らが小学校1年生のある時、私が用事で小学校に徒歩で向かっていたところ、Aくん達に出会いました。

挨拶した後、Aくんが話しかけてきます。

「ねえ、どうしていつも歩いてるの?車乗らないの?」

「おばちゃんねー 小さい時からこっちの(斜視の)目が悪くて、よく見えなくて危ないから乗らないんだよ~」と答えました。

その時は「ふーーん」と返事があっただけでした。

 

少し経って、長男の野球チームが、学校ではなく、離れたグランドで練習することがありました。

お迎え必須で、仕事帰りに小1の二男を連れてグランドへ歩いて向かいました。

 

Aくんも、お兄ちゃんの練習に付き添いで来ていました。グランドの隅の私を見つけて、てくてくと近づいてきます。

「今日は、どうやってきたの?歩いてきたの?」

そうだよと答えると、

「帰りはどうするの?歩いて帰るの??・・・オレんちの車に乗って帰りぃよ!」

いやいや・・お母さんともそんなに交流ないし、申し訳ないし、終わったらこっそり帰ろうと思っていました。

でも、帰る頃になって、薄暗い中再び私を探しに来たAくん。

小さな手で私の手を掴んで、お母さんの車に引っ張って行ってくれました。

「だって歩くんでしょ?遠いし、暗いよ。オレがカアサンに言ってやるよ!おいで。」

小さな手が温かくて、本当は涙が出そうなくらい嬉しかった。

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それから、何かある毎に、私を心配して「今日は歩き?」と声をかけてくれるAくん。

私の目について、変な顔をすることも1度もなく、私が困っていると、「オレが教える!」「オレがしてやる!」と小さい体で一人前に助けようとしてくれます。

私にとって、Aくんは小さいヒーローでした。

 

お母さんとも仲良くなり、今は、行事などあるごとに、お母さんが「連れて行こうか?」と声をかけてくれます。

 

 このままで生きていこうと思う

この年になっても、色々と悩むことも傷つくこともあります。

  でも、幸いにも、私のできないことを理解して、助けてくれる家族や友人、小さなヒーローにも出会えました。

段差があることをさりげなく教えてくれ(段が見えず転ぶので)、

ペンを手渡しする時、手に当ててくれ(距離感わからず掴めないので)、

「そんなに目立たないよ」と、写真を見てもフォローしてくれます。

 

お金を出して手術すれば、見た目だけでも改善する可能性は、あるかもしれません。

でも、このままで生きていこうと思っています。

 

Aくんも、もちろん中学3年になり、私よりずっと背が高くなりました。

流石にもう近づいてきてはくれませんが、照れ臭そうに挨拶してくれます。

私の心の中には、いつまでも小さなヒーローの手の温もりが残っています。