小石の眼から見た景色 あらかた50主婦のあったこと録

その辺に転がっている小石のあれこれ体験録です。

「ダメなものはダメですよ」医師の言葉に目が覚めた~初めての発達相談

「今、息子さんに聞いてます。お母さんは答えないでください。

そう言われた瞬間は、「なんて冷たくて、おまけになんて無愛想な医師なんだろう」と思ったのだ。正直に言うと。

50代半ばくらいの、男性の小児科医M先生。

真面目と無愛想でできているようなその人を前に、「これで本当に小児科医なのかしら?」 なんて失礼なことまで思っていた。

 

長男の発達の違和感について、保育園の園長室で話し合った後、市の3歳児健診を経て、県の機関で実施されている「発達相談」を受けることになった。

ちょっとしたテストや保健師さんの問診などの後、最後にM先生の診察。

慣れない場所、公共施設特有の部屋の匂いや壁のまぶしさ(白い壁紙)、初めて会う大人たち、

加えて長時間だったこともあり、診察時には既に長男はご機嫌ナナメ。

「お名前は?」「・・・」「今日は誰と来たのかな?」「・・・」「お母さん?」「・・・(無言でコックリ)」

「保育園は楽しい?」「・・・」「好きな先生は?」「・・・」「なにして遊ぶのが好き?」「・・・(無言で医師の机のミニカーを凝視)」

 

「あのぅ、保育園は行き渋りもありますが、行くと楽しそうに遊ぶようです。

担任の〇〇先生が大好きで、先生のお休みの日は保育園に行きたがらなくて困るほどです。

ミニカーや電車などの車がとにかく好きです。絵本も大好きです。それから・・・」

思わず口を出してしまった私に向けられたのが、冒頭の言葉だった。

 

だって、説明しなきゃ、質問に答えなきゃ、うちの子がどんな子かわかんないでしょ。

だって、長男は疲れちゃって答えられないんだもの。

でも、本当はちゃんと答えられるんだから、ちゃんとわかってもらわなきゃ。だって、だって・・・

 

M先生の言葉はモットモだった。

内容を知りたいのではなく、初めての場所、知らない大人、くたびれた状態でどんな反応をするかも知りたかったのだ。

それは反論のしようがない正論だったのに、私は「だって、だって・・」が頭の中を巡っていた。

 だって、だって・・・長男は、おかしくなんかない!

そんな言葉が思い浮かんで、ハッとした。

数々の違和感を感じ、それを確認するために、対策を考えるために来ているというのに、そこには、いまだに目を背けようとする自分がいる。

M先生の言葉に、ちょこっと目が覚めた気がした。 

 

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保育園での集団生活についての話になり、同行してくださった担任の先生へも質問が飛ぶ。 様々な違和感のなかで、他害の話になった。

2歳児の頃は、お友達に噛みついてしまったことがあった。

3歳児の当時は、おもちゃの貸し借りでお友達を叩いてしまったり、触られると強く払いのけてしまったり、 遊びの途中で先生に制限されると(給食の時間になったなど)頑として動かなかったり、暴れたりしていた。

「手が出ることがあるんですね。家でもありますか?」

 「いいえ、家ではありません。」

家では思い通りにできる環境だったからというだけなのだけど、言い訳ばかりが思い浮かぶ。

だって、Aちゃんは、いつも長男の一人遊びを邪魔して、おもちゃを取るから。

だって、あの時はKくんが、しつこく何度もちょっかい出すから。

だって、もう少しで完成するのに、先生がダメだって言うから。

 

「本当は優しい子なんです。穏やかな子なんです。

マイペースだけど自分から意地悪なんてしない子なんです。

本人が嫌がることをしなければ、手を出したりしないんです。」

M先生は私の目を見て、キッパリと言った。

「でもねお母さん、ダメなものはダメですよ。」

 「どんな理由があろうとも、手を出しちゃダメだって教えなきゃいけないでしょ。」

 

その言葉は、あんまりにも当たり前で、あんまりにも正しくて、 

情けないことに、私は素直には受け入れられなくて、

言葉を失って、悔し涙がにじんで、「イヤな医師だ」と本当は思った。

またしても、私は「でも、でも・・」が頭の中を巡っていた。

 でも、でも・・・長男が悪いんじゃない!

そんな言葉が思い浮かんで、ここまできても、現実から目を背けようとしていることに気付いてゾッとした。

これから先の長男の人生の中で、気の合わない人、思い通りにならないこと、嫌な思いをすることなんて、いくらでもあるだろう。

だからといって、手を出してしまって 良いわけがないのだ

音やニオイや光の感覚が過敏だとか、乱暴な子が苦手とか、マイペースが好きとか何の理由にもならない。

これから先、この社会の中で、長男が生きていけることが大事なんだ。

 

M先生の言葉に、完全に目が覚めた気がした。

 

改めてM先生をよく見ると、穏やかで、芯が強くて、深い目をされていて、子どもには、常に温かいまなざしを向けてくださっていた。

親に厳しい言葉をハッキリ伝えるのは、冷たいようでいて、真に温かい心を持っているからなのだろうと思った。

 

M先生には、小学校入学前の発達相談終了までお世話になった。

今、こうして振り返っても、M先生には感謝の言葉しかないなと、しみじみ思っている。

 

ほんさき

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