求人広告に「アットホームな職場です」なんて書いてあると敬遠してしまう。
(決して、今、求職活動中ではないのだけど。)
※今回の記事はEMIさんによるイラストACからのイラスト を使用しています。
その「ホーム」が心地よいとは限らない
「アットホームな職場です」の言葉でイメージされる職場は、一言でいうと「家庭的」な職場だろうか。
例えば、こんな言葉で表せるような。
和気あいあいとしていて、職員みんな仲良く、助け合う温かい雰囲気。
チームワークが良く、力を合わせて楽しく働ける、心地よい職場。
けれど、実際の「家庭」は様々であるように、「家庭的」が「仲良く楽しい」ばかりとは限らない。
そして、仮に「家庭的」からイメージされるとおり、「みんな仲良く、和気あいあい」だったとしても、
それが、ぬるま湯のような、ただひたすらに協調性重視の小さな職場だったりすると、決して「心地よい職場」となるとは限らない。
誰かにとっての「心地よさ」が、自分にとって心地よいとは限らないから。
「アットホームな職場」に就職したけれど
その会社には、長男を出産後に就職した。
前職関係のツテで話がまとまり、フルタイムに近かったけれど、勤務時間の少し短いパートとして庶務部門で勤務することに。
徐々に事業を拡げようとしていたその会社の庶務部門の事務所では、私が初のパート採用で、他は皆正社員。
気の弱そうな(実際弱い)課長以外は、皆私より若い女性ばかり。
面接の時、バリバリキャリアウーマン風の社長は、にこやかに言っていた。
「うちはアットホームなところだから♡」
当初、事務所初の「社員ではない『子持ちのおばちゃん』」は、もの珍しさもあって、温かく迎えていただいたのだった。
でも、私はすぐに違和感を覚え始めた。
課長が席を外したとたんに始まる「課長や他部署への愚痴タイム」という「和気あいあい」、
仕事の質問をしても、「い~のよ、テキトーで」という「温かさ」、
皆で頑張れば対応できる他部署からの依頼を「ムリ」とあっさり断る「自分の事務所内だけでの助け合い」、
テキパキやれば2時間で十分終わりそうな作業に1日かける「チームワーク」。
確かに、「アットホーム」な雰囲気だけれど、この緊張感のなさは、「仕事」としてはどうなのか?
ダラダラした雰囲気が苦痛で、少しずつ改善を提案してみようかと思ったものの、
そんなことをすれば「協調性のない人」「職場の和を乱す人」になってしまう。
「ともかく、まず、一通り仕事を覚えて、自分はきちんと仕事しよう」と静かに思っていた。
「アットホームな職場」でシンデレラな気分
その庶務部門には、若いけれども強烈なお局キャラが存在していた。
社長の親族繋がりのため、社長すら厳しく注意しないのをいいことに、自分にとって「心地よい」職場を作り上げている。そんな人だった。
彼女にとって、あまり染まろうとしない私は、次第に目障りな存在になったのだろう。
パソコンの前で作業していても、課長がいなくなると、背後から容赦なく言葉を浴びせられた。
「ねぇ、なにバリバリ仕事してんの~。ゆっくりやればいいじゃん。」
「一生懸命な人がいると、こっちがやり辛いんだよね~。」
「ってか、パートってさぁ、帰る時間が早いから、使えね~。」
「あたしは子どもできたら仕事辞めるな~。子どもほったらかして仕事するとかあり得なくない?」
「ねぇ、なんで子どもいるのに仕事したいの(笑)?」
「働くこと」と「発達凸凹の長男の育児」との間で迷いに迷い、仕事を始めた私に、浴びせられる言葉は鋭く刺さり続けた。↓↓
決め手は「自分が納得できるか」 - 小石の眼から見た景色 あらかた50主婦のあったこと録
その「アットホームな職場」の「ホーム」は、まるでシンデレラの「ホーム」のよう。
意地悪な義母と義姉たちが、仲良く、和気あいあいと過ごす「彼女たちにとって」心地よい場所。
その和に入れなければ、自分のあらゆることを否定される、しんどい日々が待っている。
他の誰も和を乱さず、誰も助けてなんてくれない。
他部署からの面倒な依頼を、課長が「対応してください」と指示しても、
「えー。最初に電話受けたの、ほんさきさんなんだから、あんたがすればいいじゃない」なんて平気で言われる。
「ホーム」の外にいるから、助け合いの対象にはならない。
私は、すっかり「Mrs.シンデレラ」な気分だった。キラキラのお姫様ではなく「灰かぶり」の。
魔法使いを待たず、魔法を手に取ろう
しんどくはあったけれど、働くと決めた以上踏ん張らなければ。
私は、自分が納得できる人生を歩もうと思ったのだから。
仕事が早く片付いた時は、少しでも自分の作業を効率的にできないか探りながら、仕事に関連することを勉強した。
「自分はパソコンを使える」と思っていたけれど、介護の仕事や育児などで、パソコン作業からしばらく離れていた間に、様子は一変。
文書は「一太郎」から「Word」へ、表計算は「ロータス」から「エクセル」に変わっていたし、
画面もインベーダーゲームのような「黒背景に緑文字」から「白い背景に黒文字」になっていたΣ(゚д゚lll)。(若い人には何のことやら?ですね(・・;) )
仕事の合間に、四苦八苦しながら練習した。
他部署からの面倒な依頼を押し付けられているうちに、他部署の方々と交流でき、そこそこの部署の仕事も教えてもらった。
庶務部門だけに、会社の新規事業のお手伝いなどもチョコチョコ依頼され、押し付けられたけれど、せっかくなので勉強がてら対応させてもらった。
2年近く経った頃、交流を深めた他部署の方々と共に新規事業立ち上げに関わることになり、庶務部門から異動した。
誰に教えてもらえるでもなかったし、目が回るほど忙しかったし、厳しいことも言い合い、嫌なことも山ほどある「アットホームではない職場」だったけれど、
新しいことをチームで作り上げていく日々は、この上なく充実していた。
ある時、新しい部署で、庶務部門に依頼することがあり、あのお局さんから「ムリ」と言われた。
でも、ムリではないことがわかるから、「コレコレを、あーすれば、できると思うので、お願いしますね!」と言うことができた。
やがてお局さんは職場を去り、私は10年近く勤務した。
物語の中のシンデレラは、(なぜか)魔法使いが助けてくれた。
やがて、王子様が見つけてくれて、王子様に幸せにしてもらった。
けれど、現実世界の 「アットホームな職場」でシンデレラになったら、魔法使いを待っていたって何も改善しない。
耐えられないほどのイジメならば、すぐに逃げなければならないけれど、
そこにいるからこそできる勉強をして、力(魔法)を手に取って、自分を自分の魔法でドレスアップすることを目指すのもいいかもしれない。
せっかくならば、ドレスアップして逃げてしまえばいい。
王子様を探して舞踏会に行ってもいいけれど、自分の魔法で幸せになっても、またいいかもしれない。
今、まあまあ「アットホームな職場」にいる。
相変わらず協調性が乏しいので、「厳しい人」だと、煙たがられている節もある。
でも、多分もうシンデレラにはならない。どうやら「魔法使いのおばあさん」に近いから。
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