小石の眼から見た景色 あらかた50主婦のあったこと録

その辺に転がっている小石のあれこれ体験録です。

1を聞いて10知った気になるくらいなら、なんにも知らない方がマシ~そしてゼロから1は∞

それは、25年以上前。まだ、私が公務員になりたての頃の話。

「1を聞いて10知った気になるくらいなら、なんにも知らない方がマシだと思います。」

怖いもの知らずだった私は、こう発言して、お偉い人を非常に怒らせてしまったのでした。 

「オレは100カ所見てきたんだ!」

まだ新人の頃、研修の一環だったのか、自主的だったか忘れたけれど、同期で集まって討論会をするような場面がしばしばありました。

その時々の、そのお役所の関係する、いくつかの大きな問題点をテーマに話し合います。

とあるテーマで、ある職業の、ある分野について、「『現場を盛り上げていくための課題』」のことについて話し合うことに。

話し合いの中で、ある同期が言っていたのです。
「そんなところの対策なんて無駄だ」と。 

「オレは、学生時代100カ所近く現場を見てきたんだ!よく知ってる。
みんなやる気がないところばっかりだ。対策したって無駄だ。」と。

おぉ!学生時代から、この分野で公務員になろうと、現場をまわるなんて、すごい熱意!

しかし、だ。

全国で、数十万カ所にも及ぶその現場の「100」を見たからと言って、「みんな」を語るのはどうなんだ?

加えて、あなたが見たのは、ではない。
その貴重な経験は、すでに通り過ぎた過去。
その経験で「今の全て」を語ってはいけないのじゃない? 

(ふんっ。しかも、えっらそーによぉ!) 

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「100カ所見たからって、全てを知ってることにはならないよ。
簡単に『みんなやる気ない』なんて言うな。」

同期の中では、どちらかというとオトボケキャラだったのに、思わず発言してしまい、
一同の「ぎょぎょっ!?」という視線を集めてしまったのでした。

ちょっとの事例で全てを知った気になる危険 

その後、「現場を知るため」の正式な研修として、新人たちは一斉に全国あちこちの「現場」に散らばり、
各自そこに〇十日滞在し、貴重な経験を積ませていただきました。

研修終了後、しばらくして、私たちは広い会議室に集められ、研修報告会が開かれました。

いくつかのグループに分かれ、まずはグループ内で研修報告。
賢い同期たちが、立派に発表していきます。

「コレコレの現場で、こんなことした結果、課題は、×××だとわかりました。」

「自分は現場の、アルバイトさんの仕事内容と〇〇の統計をとり・・・」 

「現場はこういった状況です。今後、△△などをすべきと思います。」

「現場を知ることができて、今後の仕事につながります。」

同席している、どこかの部署のお偉い人もご満悦の表情です。

 

私自身は、当時、研修先のみなさんに大変よくしていただき、今でも交流が続いています。
(研修を受け入れてくださったのに、結局公務員を辞めてしまい、大変心苦しかったのですが、笑って許してくださるような方々でした。)

そんな、受け入れ先だったのに、いや、だったからこそ、研修中ずっと違和感を感じていました。

いずれ、また元の職場に戻ることが保証されている自分が、ちょっと体験したくらいで、本当に「知っている」ことになるのだろうか?と。

わかったことと言えば、「自分は到底『知り得ない』」ということではないのか?と。 

私の発表の順番がきました。

「私は、この研修に行ったがために『1を聞いて10知った気になる』くらいなら、
なんにも知らない方がマシだと思います。」 

「ちょっと体験したくらいで、『現場のことは全部知っている』とわかった気になって、当事者の声に耳をかせなくなるのは危険だと思います。」

「そうなるくらいなら、こんな研修行かず、『自分は何も知りませんので、教えてください』と、都度お願いできるほうが断然マシだと思います。」

「私たちは、この研修で「自分たちには到底『知り得ない』」ことを知り、今後に活かしていくべきだと思います。」

同席していたお偉い人は、顔を真っ赤にしてお怒りになったのでした。
今思えば、せっかくの研修を全否定なのだから、怒るのも無理はないのですが。 

「自分の知っていることは『一部分』」だと自覚する

今、ここにこうして書いている、若かりし頃の自分の発言は、自分自身への戒めでもあります。

年齢を重ね、経験を重ね、色々なことを「知っている」気になってしまっていないか?

自分の「知っている」ことは、ただの「一部分」なのに、「全て」であるように考え、語ってしまっていないだろうか?と。

昨今のギスギスした風潮の中、

「コロナ陽性」だと、さも「人の迷惑を顧みず、気をつけなかった人たち」と非難する気持ち。

「医療従事者」だと、さも「汚染されている人」「危険を顧みない素晴らしい自己犠牲の精神を持っている」と他人事のような気持ち。

「公務員は・・・」と、さも「いつも仕事サボって楽をしている」「態度が悪い」「仕事の効率が悪い」と攻撃の標的にする気持ち。

「若い人は・・・」「高齢者は・・・」

先の見えない不安が重なって、さまざまな苛立ちが入り乱れているように感じています。

けれど、そのひとくくりにした「何か」の中で、自分が知っているのは、ごく一部分。

確かに、自分が経験したなかで、不愉快な事例もあったでしょう。
それは、事実です。

けれど、思い出して思わず苛立つ時も、自分の知っている一事例で全てを知った気にならないよう、

全ては「到底『知り得ない』」ことを、忘れないようにありたいと思います。  

ゼロから1は∞ 

さて、話は戻って、研修報告会での私の発言で、偉い人が顔を真っ赤にした後のこと。

同期のOくんが、気まずい雰囲気の中、発表してくれました。

「『1を聞いて10知った気になるくらいなら、なんにも知らない方がマシだ』という意見は、なるほど!と思いました。気をつけなければならないと。」

「でも、僕は、その分野の勉強をしてきていない(むしろ法律専門)ので、全くのゼロでした。」

「ゼロから1だけでも知ることができたのは、大きかったと思います。」

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 確かに、ほんと、そうだ!ゼロから1は∞だ! 

そのことを考えることができず、私も偉そうだったわ~恥ずかしい(-_-;)
そして、偉い人の「赤い顔」が戻ってる!ありがとうOくん!

心の中で、感謝感謝だったのでした。

報告会最後の挨拶で、あの偉い人に「こんなけしからん発言をするヤツがいた!」とみんなの前で言われてしまったけど、
(お怒りがぶり返したらしい(-_-;))

おかげさまで、参加者みんなに意見を伝えることができたのでした。

今では、全く交流がないのだけれど、Oくん始め、同期のみんな、相変わらず頑張っているのかなと
ちょっと懐かしく思い出します。

(色々書いたけれど)私の同期たちは、みんな真面目で、一生懸命で、あったかい人たちだったな。と。 

※本記事のイラストはmono777さんによるイラストACからのイラストを使用しています。 

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