小石の眼から見た景色 あらかた50主婦のあったこと録

その辺に転がっている小石のあれこれ体験録です。

かみ合わなかった母娘~白桃の缶詰とみかんの缶詰

5月は「母の日」があるので、もう10年ほど前に他界した母について、やっぱり色々と思いを巡らせてしまう季節。

今、新型コロナの影響もあり、第2日曜日の「母の日」だけではなく、5月の1ヶ月間を「母の月」とする取り組みもあるよう。↓↓↓

ideasforgood.jp

我が家は、いつも、義母へのプレゼントを「5月の行ける時」に渡していたので(「義父の分と一緒に」なんてこともあり・・)、
以前から「母の月」実施中ではあるけれど(;'∀')

誕生日のご馳走

子どもの頃、我が家はあまり裕福ではなかったので、「カタマリのお肉」を食べられるのは、運動会か家族の誕生日くらい。

メニューは決まっていて、運動会は鶏の照り焼きで、誕生日の主菜はトンカツ!

しかし、トンカツが今一つ好きではなかった私は(最後の一切れが脂身ばっかりだった時のショックって言ったら、もう・・) 
誕生日のご馳走で副菜を務める「フルーツサラダ」が楽しみだった。

年に数回しか食べられなかった我が家の「フルーツサラダ♡」
プリン♡に並びそうな、喜びの思い出詰まる一品の作り方を思い出してみると、

缶詰フルーツ、バナナ、リンゴ、キュウリのうす切り(彩のため緑色が欲しかった?)を、黄桃缶のシロップとマヨネーズで和える
「あれ?それって美味しいのか??」(キュウリとマヨネーズない方がよくない??)と思ってしまって、
記事を書きながら、1人静かにオロオロしてしまったけれど、多分、美味しい(;'∀')。

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白桃の缶詰とみかんの缶詰

物心ついた頃から、母は身体の弱い人だったので、姉や私は小学校に上がる前から、できる範囲ではあるものの家事の手伝いをしていた。
休日や学校の早い日の、近所のスーパーへの買い物も、その一つ。

誰かの誕生日メニューの日は、荷物が重くなるので、母も一緒に買い物に行く。

いつもは一番安い肉なのに、トンカツ用の肉を買い、バナナ、リンゴ、そしてこの時だけは、フルーツの缶詰をカゴに入れられるので、テンションが上がった。

買う缶詰は決まっていて、「パイン」、「黄桃」、「白桃」、「みかん」を1缶ずつ。

私が小学校低学年頃だったか、ある誕生日のお買い物の時、母が私に尋ねた。
「沢山作らないといけないから、もう一缶買おうと思うんだけど、どれがいい?」

おぉっ!あと1缶、食べたいフルーツ缶をチョイスできるっ!!ラッキー!

突然訪れた幸運にワクワクしながら、缶詰売り場で固まる私。思考がグルグルまわる。

本当は、プリン・ア・ラ・モードにのってる「サクランボ」食べてみたいけど、高いし小さい缶だからな~。量増えないからバツだな~。

そうそう白桃も好きなんだよ~♡。甘くて柔らかくてジュワっとして美味しいよな~♡

白桃って言おうかな~。でも一番(4つの中で)高いんだよな~。
高い缶詰欲しいって言ったら、嫌がられるかな。
安いみかんの缶詰って言ったら、お母さん「よかった~」って思うかな。

どうする?どうする?
「自分の食べたい気持ち」と、「母に喜ばれたい気持ち」が頭の中で闘って、

私は、「 みかんの缶詰がいい!」と答えた。

「あら、そう。」母は別に喜ぶでもなく、あっさりそう言って、カゴにみかんの缶詰を入れた。 

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 acworksさんによるイラストACからのイラスト  

「う~ん。もしかして何かチョイス間違ったかな~?」と心の中に何か引っかかりつつ迎えた夕飯時、
缶詰みかんの比率が多めのフルーツサラダを前に、母が皆に言った。
「この子は、みかんの缶詰が好きなのよ。白桃の缶詰の方が美味しいと思うんだけど、変な子ね~。

あぁ、私は、またしてもミスしてしまった。  

かみ合わない母娘

母と私は、いつもそんな感じだった。

子ども心に、母に喜んでもらえることは何だろうかと考えるのだけれど、どうにも上手くかみ合わなくて、

「母の望む子どもの反応」ではない答えを選んでしまい、「変な子ねぇ。」ってレッテルを貼られていくばかり。

おそらく、母にもある「娘を思う気持ち」と、私の母への気持ちは少しずつズレて、
年を重ねる毎に、互いへの失望を重ね、かみ合わせは、ずい分狂ってしまった。

 

「あなたは感情が顔に出やすいから、気をつけなさい。」

母は、子どもの頃から、大人になってからも、私にそう注意していた。
その指摘は、悔しくなるほどあたっているのだけれど、
「私の気持ちなんてなんにもわかってないくせに、わかったようなことを言う。」
と、いつまでも反発心が募るばかり。

私の感情が表に出たことはわかるくせに、なぜそんな感情が溢れるに至ったかなんて、ちっともわかろうとしていない

本当は、どんな思いを抱えているかなんて、なんにもわかろうとしていない

「あら、どうして?」「どうしたの?」って、言ってくれたことがあっただろうか?

私は、進学も、就職も、結婚も育児も、母に何ひとつ相談せず、何も頼らず、母を極力避けることで苦しさから逃れようとした。

 

母の介護が本格化してきた頃から、かみ合わせのズレは、やっぱり私を苦しめた。

ゴミ屋敷と化した家を強引に片づけ、
他人が入り込むのを嫌がっても、ヘルパーさんをお願いし、
「失礼な!!」と怒られながら、認定調査を受けさせ・・・

主導する私は、いつも「イヤな娘」だと、眉間にしわを寄せられた。

 呼吸苦で救急搬送された後、母の希望を確認しようとしても、
「 親の死ぬ時の話を持ち出すなんて!」と、「とんでもない娘」だと非難された。

「お兄ちゃんは忙しいから仕方がないの。」
「お姉ちゃんは、いつも優しくしてくれるのに。」
「ほら、また、あなたはすぐ顔に出る。そういうところ、なおさないと。」

私は、心の中で叫ぶ。
「ねぇ、どうやったら、これでも優しく微笑めるのかを、教えてよ!」と。 

 かみ合わなくてもいいんじゃない?

私は、あのお買い物の時、頭の中でグルグル考えるだけでなく、素直な気持ちを言えばよかった。
「白桃の缶詰が好き。でも、高いけどいいの?」と。

母は、あの時、素直な気持ちを言ってくれればよかった。
「白桃の缶詰の方が美味しいと思うんだけど、みかんの缶詰でいいの?」と。

私は、母が「わかろうとしていない」ことに腹を立てるだけでなく、
「わかってほしい」気持ちを伝えて、「わかってもらう」工夫や努力をしてもよかった。

 それでも、もしかすると、やっぱりかみ合わなかったかもしれない。

でも、今は、「かみ合わなくてもいいんじゃない?」とも思っている。
母と娘だけど、違う人間なのだから、合う合わないはきっとある。

「親子だから、母娘だから、わかり合える、通じ合える。」

そんな呪いのような幻想のせいで、
「自分たちはおかしいのじゃないか?」「なぜわかり合えないのか?」と苦しんでいるだけかもしれない。

相手を思っても、わかってもらえないことはある。母娘でも。
相手も、互いの幸せを願っている同士であっても。

「上手くかみ合う」ことばかり気にせず、お互い、自分にとって幸せである道を選べばいいのだと思う。

 

フルーツ缶を冷やすと、ちょっとしたデザートとして楽しめる。

老いた母は、やっぱり白桃の缶詰が好きで、時々一緒に食べた。
「みかんの缶詰も、ジューシーで美味しいよね」って言いながら、二人で食べた。

私たち母娘がかみ合わなかったのは、違い過ぎたのかもしれないけれど、
もしかすると、似すぎていたのかもしれない。

ほんさき

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