小石の眼から見た景色 あらかた50主婦のあったこと録

その辺に転がっている小石のあれこれ体験録です。

発達凸凹でグレーゾーンなことを本人へ告知する

「僕は、何か病気なの?」
長男に尋ねられた時、私は言葉に詰まってしまった。

無料相談を受けた民間の支援施設は海の近くで、帰りのバスを待つ間、海辺で遊んでいた。

「波が大きな音をたてるけれど、大きな音が苦手な長男も、自然の音ならば苦にならないんだな~」
と、笑顔の長男を見ながら、ぼんやり考えていたところだった。

本人が疑問を抱き始める 

それは、長男が小学校4年生の頃。

長男は、3歳の頃から小学校に上がるまで、毎年1回、県の施設で発達相談を受けていた。
当時は幼かったうえに、保育園は帰る時間が皆バラバラだし、
「何故か自分だけ、親と先生と一緒にどこか遊びに行く」ことも、気にしている様子はなかった。

 小学3年生が終わる頃トラブルが増え、4年生になって、久々に県の施設に出向いた。
その後、職場の上司の紹介の支援施設にも足を運んだところだった。

放課後に行ける時を選んだけれど、さすがに4年生ともなれば、
「他のクラスメイト達は行っていないようだ」「一体、なぜ自分はそこに行くのか?」
と、疑問を持つのは当然だった。

「保育園の頃行っていたから、久しぶりに様子を見せに行くんだよ。」
「元気かどうか、確かめに行くんだよ。」なんて言葉で連れ出したけれど、
疑問を抱き、本人なりに出した答えが「自分は病気なのか?」だったのだろう。 

それなのに、私は思わず「そんなことないよ」と、その場しのぎの言葉で誤魔化してしまい、
長男は「ふ~ん」と言って、また波と戯れていた。

いつ、なにを、なんと伝えるべきか迷う

長男が、どんな思いで「自分は病気なのか?」と尋ねたかと思うと、誤魔化してしまったことが心苦しかった。

そして、いつか、本人にきちんと伝えなければならない日が来るのだと思って、ハッとした。
私は、そのことについて考えたこともなかった。恥ずかしながら、その時まで。

長男の発達凸凹に悩み、奮闘していたつもりなのに、やっぱり心のどこかで「個性の範囲」にしがみついていた。

だから、伝える必要性を考えつきもしなかったのだ、私は。 

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けれど、「いつか、本人にきちんと伝えなければならない日が来る」としても、一体いつ、なにを、なんと伝えるべきか。

伝えるにしても、本人のためにならなければ意味がない。
ただ傷つき、自己否定につながってしまうのなら、言わない方がマシな気がする。

受入れやすく、傷つかず、これからを生きていくために「聞いておいて良かった」と思えるような、
そんな言葉が、その頃私にはわからなくて、大いに迷った。

人とは少し何か違うことを、前向きにとらえる言葉が見つからない。
「どうせ自分はダメなんだから」と諦めてしまわないだろうか? 

私は、必要性を感じつつも「今じゃなくてもいいんじゃないか?」と、逃げてしまっていた。 

本人へ告知する

長男が中学生になった頃、私は、とあるブログに出会うことができた。 

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ある日の夜。ほとんど口をきいてくれなくなっていた長男に、思い切って告知した。

3歳の頃から、他の子と少し発達が違っていると言われてきたこと。
県の施設に通ったのは、発達相談を受けるためだったこと。
結論としては、「個性の範囲」と言われたけれど、「発達凸凹でグレーゾーン」であること。

「つまり、僕は『変』で『おかしい』ってことだろ。」
長男は大してショックを受けた様子も見せず、「フンっ」と鼻で笑った。

他の人と比べて「変」で「おかしい」ことくらい、もう十分わかってる。 
もう十分、言われてきた。そんなこと。

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さあ、なんと言おうか。本当に伝えなければならないことを。
私が、本当に伝えたいことを。

 

「あなたは何も違わない。何もおかしくない。普通の人だよ。」とは言えない。

「変だ」と言うより、「違う」んだよ。
「変わってる人」と言うより、多くの他の人とは「違うところがある」んだよ。

それは、持って生まれたもので、「治る」ものではない。
ただし、「違う」けれど、「違う=悪い」ではないんだよ。 

例えば、音や光やニオイの「感じ方」も違うのかもしれない。

あなたにとっては、耐えがたいヒドイ音に感じても、他の多数の人は特に気にならない音なのかもしれない。

みんなが楽しそうにしている休み時間に、ざわざわした教室にいるだけで疲れるのは、
あなたが「おかしい人」じゃなくて「違う」からかもしれない。

逆に、あなたが何とも思わないことを、他の多数の人は「苦痛だ」と感じるかもしれない。

あなたが嬉しい時の表情は、他の多数の人から見れば「無表情」の域を出ていないかもしれない。

そして、今の日本では、あなたのような人は少数派。
他の「多数派」の人たちに、変に誤解されないための、努力は必要だと思うよ。

受け入れられ、この世界で生きていくために、「違う」ことを理解しなければならないし、
「違わない人」と平等に、競わなければならないこともあるんだよ。

そして、何度も言うけど「違う」から悪いんじゃない。ただ、「違うところがある」だけ。
私たちにとっては「違うところがある」けど、大切な息子だよ。

 

そして、「地球人なりきりスーツ」の話をした。

『火星人』のままでいい。『火星人=悪』ではない。
『地球人』にならなくていい。
なれない自分を卑下しなくていい。

スーツを着こなす練習をするのは、『火星人』のままで、地球で平和に生きていくためだよ。

 

 長男は、「ふ~ん」と、少し戸惑ったような顔をしていた。

もう少し早く、長男が他者との「違い」に苦しみ、自己否定の気持ちを抱いてしまう前に、
ちゃんと伝えることができたら、もっと良かった。私は逃げずに。

でも、少し遅かったけれど、伝えられて良かった。
「あなたのことが大切だ」と。言えないままでいるよりは、ずっと。

★★★ おことわり ★★★

発達凸凹・グレーゾーンの特性やその程度は、非常に個人差があります。ここで書いていることは、あくまでも私の息子の事例にすぎないという点を、ご理解くださいますようお願いいたします。 

★★★  ★★★  ★★★ 

ほんさき 

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