小石の眼から見た景色 あらかた50主婦のあったこと録

その辺に転がっている小石のあれこれ体験録です。

「捨て荷」という考え方で悔しさを乗り越える~相続問題で大切にしたコト

 母が他界して3年後、父がこの世を去り、
僅かではあったけれど、遺してくれた不動産と預貯金の相続問題が発生した。 

相続のややこしさは、
「遺産の金額よりも遺族間の人間関係によるところが大きい」と、私は実感している。

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もう4年ほど前に解決済みの遺産相続では、今までの家族関係を振り返らざるを得ず、
怒りや、憎しみや、悔しさが蘇る苦しいモノだった。

長兄は、第一子として、長男として、厳しくしつけられたのかもしれない。
プレッシャーが辛かったのかもしれない。

それでも、妹たちを虐待し続け、貧しい中でも最優先で習い事もモノも与えられ、
親の期待を受け、浪人も留年も許され、上手くいかなくても、病んでも、親に愛され、
就職後も結婚式も諸々最大限の援助をしてもらって生きてきたように見える。

お下がりばかりで、習い事も浪人も許されず、兄の言うことには従えと言われ、自分で何とかやりくりしてきた妹から見ると。

親に手助けが必要になったとたん、長兄は実家に寄り付かなくなった。

両親とも日常生活がままならなくなり、ヘルパーさんを頼むことを説明すると、
「甘やかすと、自分でできなくなるんじゃないのか?」
なんて、長兄は見てもいないのに偉そうに説教した。

母が危篤状態の時、携帯は着信拒否されるので、病院の公衆電話から長兄の自宅へ電話した。
「忙しくて行けない」なんて言う彼の背後で家庭の音がする。
車で2時間くらいでしょ。私より近いよね。夜の8時に家族団らんしてても忙しいん?
「今夜がヤマなんだって。とにかく来て。」私の言葉は無視された。

 

両親の子どもに長兄は確かに含まれるから、悔しくてもギリギリまで待ったのに、
長兄は2人の葬儀どちらにも現れなかった。

不動産の処理をしようにも、預貯金を分けようにも、兄妹全員の了解が必要なのに、
書類を送っても無視するので、
やむを得ず、弁護士をたて、県をまたいで家庭裁判所へ調停の申し立てを行うことにした。私が。

そして、他の兄姉たちも含め、何度も県をまたいで家庭裁判へ出向き、話し合ったけれど、結局長兄は一度も現れなかった。

立派な調停委員の男性は言うのだ。恐らく私に同情して。
「なぜ、嫁いで苗字も違う、一番年下の、女性のあなたが申し立てるのですか?」

そんな同情にも無性に腹が立った。

なぜかって?それは、私が一番聞きたいわ
年下のくせに、女のくせにと虐げられて育ったのに、
長兄は年上だ、男の子だ、偉いんだ!とちやほや育ったのに、
「なぜなんだよ!」と。

 

遺書があったわけでもなく、長兄に重大な犯罪行為があったわけでもない。
遺産は平等に分配されるべき。

確かに、遺産は親の財産であり、長兄とて両親の子なのだから、当然なのだ。

そういう法律であり、制度であり、それが常識なのだと頭で理解しても、
感情がどうしても邪魔をする。 

介護したから見返りをとか、そんな気持で介護したのではなかったから、
介護に費やしたお金とか時間とか、精神的負担とか、そんなことじゃない。

でも何だか、どうにも理不尽な気がして。やりきれなかった。

弁護士費用も、調停の時間も労力も全て他の家族に負わせて、
彼は、じっとしていれば無条件で遺産が片付き、自分の手元にお金が入るってのも。

長兄に渡す額をゼロにするとか、もっと減らすとか、他の兄姉も憤っている。
もちろん私も。


スッキリしなくて、モヤモヤしていた時に、多分読み返していたのか、
「捨て荷」について思い出した。 

児童文学なのだけど、大人のクセにすっかり夢中になってしまった、
上橋菜穂子さんの「守り人」シリーズ。

シリーズ第一作の「精霊の守り人」はアニメにもなって割と知られているけれど、
それを読んだ時には思いもしなかった長い物語が続く。

物語の最終章、「天と地の守り人」の第2巻。
盗賊に襲われることがほぼ確実の道を、どうしても突破しなければならない場面。

百戦錬磨の女用心棒バルサは「捨て荷」を準備させる。
もっとも大切なコトのため、「生き抜く」ために。

盗賊が悪いのに、倒すことができるかもしれないのに、
なぜアイツらに大切な「荷」をむざむざ捨てて、渡さなければならないのか。

そんな一時的な感情よりも、正しいか否かよりも、大切なコトのため。 

私が、調停委員に何と言われても、申し立てたのは、大切なコトがあったから。

このまま怒りに任せ、遺産を放置したり、
意地でも渡さないと争い、調停もしくは審判が長引き、

もし私の代で解決できなかったら、私の大切な息子たちが巻き込まれてしまう。

長兄のせいで、私の息子たちが迷惑するなんて、絶対に納得いかない。
この理不尽を受け止めるのは、私で終わらせなければ。

結局、長兄が出席しないので調停は成立せず、
「調停に変わる審判」の形で解決することになった。

法律で守られる、彼の最低額を長兄に支払うことにした。

それは、「捨て荷」だ。
私が相続問題で大切にしたコトは、スピード。
理不尽を持ち越さないこと。

悔しいなんて感情より、大切にしたいコトを優先できたのだから、
悔しさを乗り越えられたのだから、よかったのだ。 

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 大切な自分の国を侵略から守るため、
思いの外しがみついていたプライドを「捨て荷」にしたチャグムに、バルサが言う

「みごとなホイ(捨て荷)だったね」

その言葉を、スケールが違うけれど、自分に言い聞かせている。 

ほんさき

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