小石の眼から見た景色 あらかた50主婦のあったこと録

その辺に転がっている小石のあれこれ体験録です。

「ザ・トラベルナース」第2話を見て経鼻経管栄養のN村さんを思い出す~認知症病棟の思い出7

2022年10月スタートのドラマ「ザ・トラベルナース」
第2話まで見たのですが、もう次の放送は第6話。

なにかと慌ただしい毎日で、録画が溜まる一方。
追いつける気がしなくなってきました。

とはいえ、結構興味深いドラマ。
第2話は「口から食べる」ことについて取り上げられていました。

少々無理があるようなスカッと系の展開を見ながら、
私は、30年ほど前に勤務していた認知症病棟のN村さんを思い出していました。

ザ・トラベルナース~第2話

木曜ドラマ「ザ・トラベルナース」
フリーランスの看護師が主人公の医療ドラマです。

トラベルナースとは…
スーツケースひとつを手にいろんな街を渡り歩き看護に従事する、優れた資格を持ったフリーランス看護師のこと。
日本ではまだその存在はあまり知られていませんが、アメリカでは全看護師の10%を占める40万人ものトラベルナースが存在し、コロナ禍のNYでも活躍しました。

(引用:番組公式ページ)

www.tv-asahi.co.jp

主演は岡田将生さん(役名:那須田 歩)なのですが、第2話まで見た感想は、
「主演は中井貴一さん??(役名:九鬼 静)」。

岡田さん素敵なんですけど、中井さんの存在感がすご過ぎる!

医療現場に颯爽と現れた《新時代のナイチンゲール・コンビ》の活躍

「痛快医療ドラマ」なのだそう(脚本が「ドクターX」の方・・なるほど。)
少々強引な所がありますが、まあ、ドラマということで楽しめます。

※以下少しネタバレあります。

第2話は「口から食べる」ことが取り上げられました。

脳梗塞後遺症のVIP患者への「リスクのない治療」のため
「胃ろう※1を推し進めようとする病院上層部。
※1:おなかに開けた穴にチューブを通し、直接、胃に食べ物を流し込む方法。

「口から食べることは、生きる意欲につながる」と、
独自で嚥下トレーニングを開始する中井貴一!
いや、静ナース。医師の命令無視してそれは無理なんじゃ??)

結果は・・・
「よかったよかった」と「ウソも方便だねぇ」でございました。
専門のセラピストいるんじゃない?とか、VIPだからできたってこと?とか
色々思わないこともなかったけれど、まあ、ドラマですしね。

経鼻経管栄養のN村さん

ザ・トラベルナースの第2話を見ていたら、N村さんの顔を思い出しました。

N村さんは、当時80代後半の男性。少々目も不自由。
私が以前勤務していた精神科の「認知症病棟」の患者さんでした。

その頃は、まだ認知症が「痴呆」と呼ばれていた時代、介護保険制度前。

N村さんは、私が勤務し始めた時には既に鼻に経鼻経管栄養※2のチューブが入っていました。
※2:鼻の穴から胃まで管を入れ、そこから栄養をとる方法

鼻から続くチューブはグルグル巻きの状態で、つるりんとしたおでこにピタっとテープ止め。
何故かというと、ふとした瞬間、あっという間にチューブを鼻から引っ張り出してしまうから。

チューブで栄養を胃に入れなければ栄養補給できないのですが、認知症のため理解してはもらえません。

チューブを鼻から胃へ入れるのは、N村さんにとって非常に苦痛なご様子。
毎回大騒ぎ、大暴れです。

そりゃ、誰だって、わけわからず(理由はあるんですけれど)鼻からチューブ入れられれば暴れたくもなります。
けれど、チューブを入れないわけにはいかず、自分で抜いてしまわないよう、
「つるつるおでこにピタっとテープ止め」となるのです。

このN村さん、チューブを入れる時以外は比較的穏やかで、
ニコニコされていることが多い方でした。

つるつるおでこにグルグルチューブが、なんというか、
大変不謹慎なのですが、かわいらしく、スタッフに人気の患者さんでした。

※栄養を注入時はイラストのような感じです。

N村さんとの日々

さて、病棟の食事の時間、N村さんは少し離れた場所で、少し時間をずらして「お食事」されます。
この時、スタッフは決して目を離せません。

なぜなら、栄養注入時は自己抜去(自分でチューブを抜く)してしまう可能性が特に高いから!
おでこピタっのチューブがほどかれ、手が届く場所にあるので危険。

そして、もし注入途中で抜いてしまうと、気管に液が入って誤嚥してしまうので非常に危険

 

しかし、60人の認知症の皆さんの昼食時間(ホールで一斉に)というのは、なかなかに大騒ぎです。

この人は「ミキサー食」、この人は「糖尿食きざみ+おかゆ」、
この人は「減塩食普通+おかゆ」、こちらは「普通食」・・・配る方も頭フル回転。

スタッフが不慣れな時には、
「自分の食事が先にこない!」と怒り出すおじいさん。
隣の人の分をとって食べてしまうおばあさん。
あちこちから怒号が・・・なんてことも。

更に、
「うわぁ、Mさんがお茶をこぼしてしまった!」→全て着替え

「あ、H山さんがオムツに手を入れている(「大」が出てしまった)Σ(゚д゚lll)」
→場所移動してオムツ交換(H山さんは3人がかり・・)

 

こんな時に、
「うわ、N村さん、抜かないでーー」なんてことになったら命に係わる。
非常に申し訳ないのですが、両手を拘束という時もしばしばありました。

当然、「おーい。手が動かんよ~。おーい。」とN村さんも大騒ぎです。

拘束はできるだけ避けたい。
病棟主任(病棟で一番偉い)が可能な限り、横で事務作業しながら見守りしていました。

この主任さん、ベテランかつ気さくな看護師さん。
N村さんとも長いお付き合い。

ふっとN村さんの手がチューブに伸びると、いいタイミングで主任が話しかけます。
主「N村さん、今お昼ご飯中よ。今日はお寿司かな~?」
N「ふあ?・・寿司!?」
主「うん。N村さん、お寿司のネタ何が好き?」
N「う~んマグロ!ウニ、イクラ・・」
主「いいねぇ。すき焼きもいいねぇ。食べに行きたいね。」
N「すき焼き?あ~いいねぇ。」

いつもこんな調子の会話が続き、N村さんは、不思議とおいしいものを食べたかのように
満足気でニコニコになるのでした。

ホールでドタバタしながらも、二人のやり取りを耳にすると、
少しほっこりした気分になっていました。

 

 

この記事、書き始めたものの何と締めくくったものか迷ってしまい、
自分自身、何が書きたかったのかわからなくなってきて、なかなか公開できずにいました。

「ザ・トラベルナース」第2話のように、ゆっくりじっくり関わって、
「口から食べる」を諦めずに頑張れるのは、それは勿論素晴らしいこと。

口から食べるって大事。
静ナースの言う通り、栄養補給だけでなく、話すことにもつながる。
食べる喜びも奪われず、生きる活力になる。確かに。

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口から食べられなくなったら、認知症になってしまったら、
「もう生きていたくない。」「胃ろうなんてしないでほしい。」そんな言葉をしばしばみかけます。

私自身「胃ろうしてまで・・」とか、「延命治療しないでほしい」と
夫に話すことがあります。

しかし、いざその時、食べる以外にも生き続けたいと思える何かがあるかもしれない。
口から食べられなくても、「ブログ書きたい」なんて思うかもしれない。

 

経鼻経管栄養で認知症のN村さん、ご本人がどう思われていたか知る由もありません。

ただ、一つ確かなことは、
ニコニコして「寿司!いいねぇ」と言ってるN村さんとのやり取りが、私は一スタッフとして好きで、
N村さんのいる病棟での日々が「できるだけ長く続くといいな」と思っていたということ。

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