近頃、義母の認知症が「ちょこっと」より少々レベルアップしてきました。
認知症病棟に勤務していたこともあり、自分では認知症について少し理解しているつもりでしたが、
妻・母親が認知症を患うことに直面する義父や義兄、夫と接する中で、認知症の家族を抱える側について改めて考えさせられます。
★★★ おことわり ★★★
私は医療や介護の専門家でも、認知症の専門家でもありません。
あくまでも個人の体験談であることをご了解の上ご覧ください。
義母の認知症はレベルアップ
年に1度の経過観察のため、義母の「もの忘れ外来」受診に付き添いました。
前回の受診の後、義母のもの忘れが「うっかり」よりも徐々に酷くなっていくと感じてはいましたが、
病院でのテストでは、昨年と比べて「記憶力低下」が明らか。
自分の母親が「今日は何月ですか?」や「今の季節は?」の簡単な質問すら間違える姿を目の当たりにして、
夫は、覚悟していたとはいえさすがに言葉を失っていました。
MRI画像も血液検査も異常は見られず、あくまでもテストと家族からの聞き取りでの判断ですが、
医師の診断は「そろそろ『認知症と年相応の境界』を越えるレベル」とのこと。
やはり・・・
近頃の義母の「同じ話を繰り返す」のレベルは以前の比ではなく、病院までの車内でも、話の始まりと終わりがつながって繰り返されるループ状態でしたから(;´д`)。
さて、診断されたところで、今日を境に『認知症』になるわけでもなく、生活が一変するわけでもなく。
それでも、ただそのままやり過ごせばいいわけでもなく。
帰宅して今まで通り過ごしながら、これからどうしていくのか改めて家族で話し合わなくては。
やりがちだけどやってはいけない
義母のもの忘れが現れた頃から今までのことを振り返って、
家族が認知症になった時周囲がついやりがちで、けれどもやってはいけないと改めて感じることがあります。
①目を背ける
初期の頃、義母が財布などを度々失くし「ただの『もの忘れ』ではないな」と思われる言動が現れても、義父も義兄も当初は夫も『認知症』と考えたがらない。
義父「ちょっと体調が悪いだけなんじゃないか?」
義兄「お母さん、別に変なことないよ。この間電話で話した時も、会話普通だったし。」
夫までも「もともと片付け得意じゃなかったし。気を付けるように言えばいいんじゃない?」
確かに義兄が言うように「電話で普通に話せた」のでしょう。
「元気?」という問いに「元気よ」くらい返せます。
踏み込んで「何してた?」と尋ね、「まあ色々ね(´∀`*)ウフフ」とごまかされても不自然には感じないでしょう。
「ご飯食べた?」に「もう食べたよ」と言われても、実はまだ食べていないかもしれない。
電話では確かめられません。
大切な家族が認知症になり、記憶の時系列が曖昧になり、物事を覚えられなくなり
その人の話は信用できなくなり、頼れなくなり、手がかかるようになる。
そんな現実は恐ろしく、目を背けたくなるのは当然のことでしょう。
そして、認知症の可能性から目を背けたくて、信じたいこと都合の良いことだけを見ようとしてしまいがちです。
結果、家族間の話し合いが不毛に終わったり、受診が遅れたり、あまりよろしくない接し方を続けてしまうことにもなりかねません。
②責める・叱る
認知症外来を始めて受診した頃と比べ、近頃、義母が大きく変わった点があります。
それは明るさや社交性が失われつつあること。
最近は毎週様子を見に行きますが、暗い顔でずっと義父に対する愚痴を繰り返します。
外出しても不安そうに「荷物これだけだった?」と何度も確認。
公民館でのサークルなどへ参加を促してもアレコレ行かない理由を話すばかり。
介護保険について話そうものなら・・・
「介護保険?とんでもない。私はそんなにできなくない。困っていない。」
「デイサービスなんて絶対行かない!!」
以前は楽しそうにおしゃべりする人だったのです。
外に出ていくのは好きで、人と話すのも好きだったのだけど。
数分単位で何度も繰り返される愚痴話。
ご近所さんに『最近話がかみ合わない。変だ』と言われた。
いつも義父に『あれしろこれしろ』言われてうるさい。
失敗するんじゃないかと心配。いろいろ忘れる。
私がもっと気をつけなきゃいけないの・・・。
どうやら義父は、ミスが多くなった義母に手を貸すつもりで口を出している様子。
「バッグはちゃんとしまっときなさい。片付けないから失くすんだ。」
「そろそろご飯を炊く時間じゃないのか?しっかりしなさいよ。」
「回覧をお隣に持っていくのを忘れないようにって、さっき言ったじゃないか!」
息子たちはたまに来て、アレを忘れてる、これを失敗してると指摘する。
「もうちょっと気を付けたらいいんじゃない?」と言う。
なぜだか以前のように覚えられない。
ミスしたくないのに迷惑かけたくないのに失敗する。
気を付けているつもりなのにまた失くしてしまった。
変なこと言っていると思われてるかもしれない。
失敗を責められ、叱られ、努力不足だと言われれば、自信を失くします。
そんな状況では、明るく楽しく話す気にもなれないでしょうし、外出するのも怖くなるかもしれません。
③我慢する
「本人の病気を受け入れ、責めたり叱ったりしないように接することが大切」と言いながら、
一方で「我慢」もしてはいけないなんて、どういうこと???と思われるでしょう。
もちろん全く我慢しないというわけにはいきません。
5分おきに同じ話を繰り返され、それが面白くない話だった日には、
もう・・・( ̄ロ ̄lll)・・まあ、ばらくは我慢ですけど。
相槌も思いつかなくなったし、「へぇそーなんですね!」って芝居も疲れたし、
正直「この無限ループから早く脱出したい!!」と思います。
申し訳ないなと思いつつも。
ただ、そう思っていいと思うのです。
「家族にこんなこと思うなんて」と自分を責めたり、「家族なんだから優しくしなきゃ」と責任感じたり。
そんな我慢はしなくていいと私は思うのです。
だって聞いているだけでもホント辛いですよ(「あ、また戻った」と笑ってしまうこともあるけれど)。
しかも、それが自分の大切な身近な人だったら、昔の姿を思い返して切なくなったり苦しくなったり、感情がぐちゃぐちゃにもなりますよ。
変な時間に電話されたり、同じものいっぱい買ってこられたり、
「き…綺麗なのか、このコップ!?」に「いつ開けた豆乳?」を出されたり。
そんなことまで我慢しなくてもいいし、自分の生活をひっくり返してまで抱えて支える必要はないと思うのです。
やってはいけないことを回避する
本人が目を背けるのは致し方ないとしても、家族は腹をくくって認知症の可能性も受け入れ、準備や心構えを整え、接し方を工夫する方がイイ。
いよいよ認知症が進み、どうにもこうにも困ってしまう前に。
私はそう思っています。
たまに会う家族は、その人の近くにいる人の話に、具体的に客観的に耳を傾ける。自分の気持ちは一旦脇に置いて。
当人が心穏やかに過ごすため、責めないように、叱らないように接するため、
目を背けず「病気」だと受け入れることが大切だと感じています。
忘れてしまうのは、家族を困らせようとしているのでも、頑張りが足りないのでもなく「病気」のせい。
例えば、インフルエンザに罹ってしまったとして、
「熱を出すな」「頑張れば咳は出ない」と言われても無理な話。
同様に、認知症を患っているのに「忘れるな」「気を付ければ忘れない」と言われても無理な話なのです。
しかも、インフルエンザのような特効薬もなければ、完治もせず、徐々に進行する。
ならば、義母の認知症のために引き起こされるアレコレで、家族が困ることは何なのか?なぜ困るのか?を考える。
困るから責めたくなるのなら、困らないよう家族で見直して工夫する。
例えば義母を潤滑油にしていた家族関係。
義父、義兄、夫でお互いちゃんと連絡とり合えば、義母に言づけなくても済みます。
「伝えるの忘れてる!」と無駄に責めなくて済みます。
そして、やってはいけない「我慢」を回避するためには、自分の正直な気持ちを許して大切にすることだと思っています。
同じ話が繰り返されてウンザリしてもいい。ちょっと工夫してみてもいい。
「さっきも聞いた!何度も同じこと言ってる!」と怒らずに、かと言って我慢して聞き続けずに
「ところで、あんときのアレどうでしたっけ?」と違う話に切り替える。
(そして違う話の無限ループが始まったりもするけれど( ̄ロ ̄lll))
とんでもない時間に電話がきたり、出たくない気分の時は途中で切る方法を考える。
毎週末、義両親の様子を見に行くのですが、夫は重い腰がなかなかあがりません。
そりゃそうでしょうよと思います。
どんな暗い話を聞かされ、老いを病気を目の当たりしするのかと思いつつ出向き、
何とか無事に過ごしている様子を見て、ほっとしながら実家を出る。
そして、開放感のような思いを抱く自分に、ちょっと罪悪感を覚える。
わかりますよ、その気持ち。
もっと優しくするべきなのに、もっと色々してあげるべきなのか、
もっと一緒にいたいと感じるべきじゃないのか。
今、実家を背にしてホッとしている自分は酷い子どもだ。
何度そう思いながら新幹線に乗っていたかわかりませんわよ。
もうやってらんない、辛いと思ってもいい。一旦逃げてもいい。
全部が全部、親の希望を叶える必要なんて全くない。
家族だけで抱えて在宅にこだわることが、果たして本人にとって最善なのか。
認知症ならばなおのこと、そうとは限らないと思います。
無理して自分が壊れたら逆に親不孝。
子どもが幸せでいることが、究極の「親孝行」ですから。
「いやいや、よくやってんじゃん。行くだけ偉いよ。
無理して行かなくたっていいし、行きたくないな~って思っていいんだよ!!」
と伝えながら、夫の代わりに愚痴や文句を吐き出しながら、時々笑い飛ばしながら、
さて、どうしたものかなと思っているところです。
ほんさき
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